SPRの基本
SPR(スタック・トゥ・ポット・レシオ)
=「自分たちが持ってるチップの深さ」 ÷ 「今のポットの大きさ」
・スタック(stack)=まだ持ってるチップの量
・ポット(pot)=すでにテーブルの中央にあるお金の量
- 有効スタック:
その場に参加しているプレイヤー同士でいちばん短いスタック。
意思決定の上限=“どこまでお金を入れられるか”の上限。
<例>
・あなたの残りスタック:100BB
・フロップの時点でポット:20BB
→ SPR = 100 ÷ 20 = 5
SPR | 状況 | 戦い方の目安 |
1〜3(低い) | ポットに対してスタックが少ない。 → ほぼオールイン勝負になりやすい | 強いハンドならそのまま突っ込んでOK |
4〜6(中くらい) | ある程度の余裕がある。 → フロップ後も多少の駆け引きができる | 相手の反応を見ながらプレー |
7以上(高い) | かなり深いスタック。 → ポストフロップでの判断が難しくなる | 慎重なハンドリーディングが必要 |
この1つの数字で、
「どこまで突っ込める強さが必要か」
「ポストフロップの難易度はどのくらいか」の目安が一瞬で共有できます。
なぜSPRが重要なのか?
- コミットメントの可視化
SPRが低い=少ないストリートで入れ切れる状況。
トップペア級でも価値が高まり、判断がシンプルになります。
逆に高い=深い意思決定とハンド読みが必要。 - 事前設計(プランニング)ができる
プリフロップのレイズ額や3ベットサイズを調整して、
狙ったSPRに寄せられます(=「このハンドは低SPRで戦いたい」「この状況は高SPRでテクニカルに」)。 - 無駄なコール/オールインを抑制
「このSPRならドローで入れ切るのは割に合わない」
「このSPRでトップペアは十分」など、コスト感が明確になります。 - 学習効率が上がる
ハンド履歴の振り返りで「当時のSPR」を添えるだけで、
意思決定の文脈が再現でき、反省点が具体化します。
ポットサイズとスタックサイズの関係値
同じハンドでもSPRが違えば最適解が変わるため、
最重要のポイントとなります。
- SPR ≈ 1–3(低SPR)
特徴:短期決戦。バリュー寄り(トップペア/オーバーペア)でスタックオフが現実的。
例:4ベットポット/ショートスタックのトナメ序中盤。
実務感:C-bet → 2発目でほぼ入れ切り設計。 - SPR ≈ 4–6(中SPR)
特徴:ミドルストレングスが増える帯。過剰コミットに注意。
例:多くの3ベットポットがこの帯に収まる。
実務感:ターン以降のポットコントロールやブラフ頻度の設計が肝。 - SPR ≈ 7+(高SPR)
特徴:ポストフロップ技術が要求される深い戦い。ドローやナッツ指向が報われやすい。
例:ディープのシングルレイズポット。
実務感:ポジション・レンジ優位を活かし、将来のポット成長余地(インプライドオッズ)まで読む。
ミニ実例(BB単位)
- シングルレイズポット:
CO 2.5BBレイズ、BBコール、フロップポット 5.5BB、残りスタック 約97.5BB
→ SPR ≈ 17.7(高) - 3ベットポット:
BTN 2.5BB
→ SB 9BB、BTNコール、(BBフォールド)フロップポット 19BB、残り 約91BB
→ SPR ≈ 4.8(中) - 4ベットポット(例):
BTN 2.5BB
→ SB 9BB
→ BTN 20BB、SBコール、フロップポット ≈41BB、残り ≈80BB
→ SPR ≈ 2.0(低)
SPRの計算方法と実例で理解
SPRの計算式「スタック ÷ ポット」で求める
- 定義:
SPR =(ストリート開始時点の有効スタック)÷(同時点のポット)
※有効スタック=参加者のうち最も浅いスタック。通常はフロップ開始時に計算。 - 単位:
BB(ビッグブラインド)換算が実務的。
現金額でも可ですが、比較が効くBBを推奨。 - 実務TIP:
トナメのBBアンティやマルチウェイはプリフロップのポットが膨らむ
=SPRが下がる(=入れ合いになりやすい)。
H3:プリフロップでの計算手順
- 前提をそろえる
- 自分と主要相手のスタックをBB表示にする(例:100BB)。
- 有効スタック(短いほう)を特定。
- フロップに行く直前のポットを把握
- ブラインド(SB・BB)、アンティ、レイズ/3ベット/4ベットの最終コール額までを合算。
- フォールドしたブラインド分(例:SBの0.5BB)もポットに残る点に注意。
- SPRを算出
- SPR = 有効スタック ÷(フロップに入る時点のポット)
- 目安帯:低(1–3)/中(4–6)/高(7+)
迷ったら、
「誰が一番浅いか」
「フロップ時点のポットは何BBか」
を先に決める。
実際のハンド例でSPRを算出(例:100BBスタック、レイズポット)
前提:全員100BB、アンティなし。
- シングルレイズポット(CO 2.5BB、BBコール)
ポット(フロップ時点)
=CO 2.5 + BB(1+1.5) + SB 0.5
= 5.5BB
有効スタック=約97.5BB(2.5プリフロップで投入)
SPR ≈ 97.5 ÷ 5.5 ≈ 17.7(高SPR)
→ テクニカル。ポジション・レンジ差・将来のポット成長を意識。 - 3ベットポット(BTN 2.5BB → SB 9BB、BTNコール、BBフォールド)
ポット=SB 9 + BTN 9 + BB 1 = 19BB
有効スタック=約91BB(BTNは2.5+6.5、SBは0.5+8.5投入済)
SPR ≈ 91 ÷ 19 ≈ 4.8(中SPR)
→ 過剰コミット注意。ワンペアは状況依存、ポットコントロール有効。 - 4ベットポット(BTN 2.5 → SB 9 → BTN 20、SBコール、BBフォールド)
ポット=SB 20 + BTN 20 + BB 1 ≈ 41BB
有効スタック=約80BB
SPR ≈ 80 ÷ 41 ≈ 2.0(低SPR)
→ スタックオフ前提。オーバーペア/TPTKは入れ切り設計。
ルール・サイトにより細部は前後しますが、
意思決定の数値(低・中・高)を捉えられれば十分に実務適用できます。
SPRによって変わる最適なプレイ戦略
低SPR(1〜3)=オールインや強いハンド向けの状況
特徴:
少ないストリートでスタックが入る。判断はシンプル、バリュー寄り。
基本方針:
- 入れ切り前提の設計:
フロップ〜ターンで自然にオールインになるサイズを選ぶ(例:ポットの50–70%→ターンでプッシュ)。 - スタックオフ・ライン:
- OK:オーバーペア、TPTK、強ドロー(NFD+オーバー、コンボドロー)。
- 注意:弱キッカーのトップペア/二番手フラッシュ・ストレートは相手レンジ次第。
- 避けるべきこと:
- 中途半端なミニベットでターンに妙なSPRを残す(=フォールドエクイティもバリューも取りにくい)。
- 明確な劣勢レンジにブラフの入れ合い。
中SPR(4〜6)=ミドルストレングスハンドで慎重に
特徴:
ワンペアが「強すぎず弱すぎず」。エッジはポジション・レンジ優位とサイズ設計で作る。
基本方針:
- ポットコントロール:
中位強度(TPTK/オーバーペア下位)ではチェックや小さめCBを織り交ぜ、ターン以降の被スタックオフを回避。 - レンジの厚みを活用:
3ベットポットでレンジ優位がある側は、小〜中サイズCB→ターンでセカンドバレル計画。 - ブロッカー意識のブラフ:
Aハイバックドアや重要カードのブロックで2バレル・3バレルの筋を通す。 - よくある損失:
- 2オーバー+バックドア無しを惰性コール→ターン以降で困る。
- レイズ返しに過度にコミット(コール止め or 降りる判断を早めに)。
高SPR(7以上)=ポストフロップ技術が求められる
特徴:
ポジション・ナッツ優位・将来EV(インプライドオッズ)が重要
基本方針:
- レンジ構築は“極”へ:
- バリューはナッツ・近似ナッツを厚く(セット、強2P、強ドロー+オーバー)。
- ブラフは将来ナッツ化しやすい線(ナッツFD/SD、GS+オーバー等)。
- ポジションの徹底活用:
IPは小サイズで広くCB→後続ストリートで極のレンジに絞って圧をかける。 - 過度な“トップペアの大戦争”を避ける:
高SPRでの薄バリューは相手のレイズレンジに踏まれやすい。 - レイズの意味付け:
深い場面のレイズは極端に強い/極端に弱いの二極化が基本。中途半端なレイズは自己破壊。
SPRとハンド強度の関係性を理解
トップペアは低SPRで価値が上がる
結論:
SPR≦3では、トップペア・トップキッカー(TPTK)やオーバーペアは“入れ切る候補”。
→残りストリートが少なく、相手が完成ナッツを作る余地も小さいため、相対的バリューが上がるため
- 設計例(SPR=2.5):
フロップPot 20BB/Behind 50BB
→ Flop 60–70%(12–14BB)
→ Turn 100%で自然にオールイン。 - 実戦ルール
- OK:TPTK/オーバーペア/強Kickerの2ndペア+強いランナランナ。
- 注意:大きなレンジ不利(例:4betポットでOOPが極端にレンジ劣位)や
明確なボード不利(超ウェット)では突っ込みすぎない。
- よくあるミス:
SPRが低いのに薄く小刻みに打って“中途半端なSPR”をターンに残す。
→ レンジ優位が活きず、逆転ラインも与える。
ドロー系ハンドは高SPRで有利になる
結論:
SPR≧7の深い局面では、将来EV(インプライド・オッズ)を活かせるナッツ指向のドローが強い。
→完成時に大きく回収でき、失敗時は適切に降りられる自由度があるため。
- 有利なドローの条件
- ナッツ性:NFD/OESD+オーバー/二方向ドロー(Combo)
- ポジション:IPでのフロート→ターン加圧/Check-raiseのバリエーション
- ライン設計:
小〜中サイズのCBに対して浮いてターンで圧、
あるいはウェットボードでCheck-raiseしてフォールドエクイティ+完成時最大化。 - 避けるべきこと:
低ナッツ性の薄いドローで大きなレイズに付き合うこと(完成しても逆にドミネートされやすい)。
SPRが判断基準になる代表的なシチュエーション
- 3betポット(SPR≒4–6)でのTPTK
- 目安:レンジ優位側IP→小〜中サイズ2ストリートで充分。
レイズ返しには過剰コミットしない。
- 目安:レンジ優位側IP→小〜中サイズ2ストリートで充分。
- 4betポット(SPR≒1.5–3)でのオーバーペア
- 目安:入れ切り設計が基本。
極端なボード(AハイでKK/QQなど)のみ減速検討。
- 目安:入れ切り設計が基本。
- シングルレイズ・ディープ(SPR≧12)でのセットマイン
- 目安:IP×ナッツ性を満たすと最大化可能。
ただしマルチウェイで相手ナッツに被弾しないレンジ選定を。
- 目安:IP×ナッツ性を満たすと最大化可能。
- ウェットボードでのセミブラフ
- 低SPR:1発+押し込みでフォールドエクイティを即回収。
- 高SPR:Check-raise/フロート→ターン圧など、将来EVまで見たルートを選択。
- トップペアに対するレイズ対応
- 低SPR:コール→次ストで入れ切りが現実的。
- 高SPR:コーラー優位(レンジギャップ)が働きやすいのでフォールドやコントロールが利益的。
トーナメント vs キャッシュゲーム
トーナメント:スタック管理が鍵
特性:
ブラインド上昇+アンティで自然にSPRが下がる。
さらにICMにより“賞金EV重視”で薄い勝負を避ける場面が多い。
- 実務ポイント
- 20–40BB帯:多くのポットが低〜中SPR。
ワンペアで入れ切れる局面が増える一方、ICM局面(バブル/FT)では過剰コミット回避。 - Push/Foldレンジ:SPRというより残りBBでの意思決定が優先される帯(特に≦15BB)。
- Bounty/Mystery:ヘッズアップやバウンティ価値でプッシュが拡大する
→SPR低下を前提に設計。
- 20–40BB帯:多くのポットが低〜中SPR。
キャッシュゲームではディープスタック戦略に影響
特性:
リバイ可能でディープ(200BB〜)が発生。
高SPRが常態になりやすい。
- 実務ポイント
- ナッツ指向レンジ:
高SPR環境では薄い1ペアの大戦争禁止。セット・強2P・NFD/OESDの価値が上がる。 - サイズ設計:
小さめCBでレンジ広く→ターン・リバーで極のレンジに絞って圧を掛ける。 - レイク影響:
小ポット多発はレイク負けの温床。ポラライズ(強弱二極)で価値抽出を明確に。
- ナッツ指向レンジ:
BB(ビッグブラインド)単位で見るSPRの目安
ざっくり使える現場の基準(フロップ開始時):
- SRP(シングルレイズ):SPR 12–20(ディープ)
- 例:CO 2.5BB→BBコール、アンティ無→SPR≒18前後
- 戦略:テクニカル。1ペアは“状況次第”、ドローはナッツ寄りで運用。
- 3betポット:SPR 4–6
- 例:BTN 2.5→SB 9、BTNコール→SPR≒4.5–5
- 戦略:過剰コミット回避。サイズは小〜中でレンジ優位活用。
- 4betポット:SPR 1.5–3
- 戦略:入れ切り設計。オーバーペア・TPTK中心。極端なボードのみ減速。
- 戦略:入れ切り設計。オーバーペア・TPTK中心。極端なボードのみ減速。
- マルチウェイ/BBアンティ有:同条件でもSPRは下がる
- 戦略:薄利コール禁止。ナッツ志向とフォールドの早さが利益を守る。
プロが意識しているSPR戦略
プリフロップレイズ額でSPRをコントロール
原則:
プリフロップでポットを大きくするほどフロップ開始時のSPRは下がる。
- 低SPR(1–3)を作りたいとき:
バリュー中心(AA/KK/QQ/AKsなど)。3bet/4betサイズをやや大きめにして、
ポストフロップで“入れ切りやすい”状況に寄せる。
例):BTN 2.5BB → SB 9BB → BTN 20BB(4bet)→ SPR≒2 - 中SPR(4–6)を作りたいとき:
レンジ優位はあるが、ワンペアで無理したくない場面。
標準〜小さめの3betでOK。
例):BTN 2.5BB → SB 8–9BB(3bet)→ コール → SPR≒4.5–5 - 高SPR(7+)を残したいとき:
スーテッドコネクター/ローポケット/ブロードウェイのテクニカル運用を狙う。
IPなら2.2–2.5BBのオープン+コール寄りで、深い戦いを敢えて残す。
ミスマッチ
・低SPRなのに弱いドローやローポケ(完成しても薄い=回収幅が小さい)。
・高SPRでオーバーペアを過剰コミット(ナッツに踏まれやすい)。
→ “作りたいSPR”と“持っているハンドの性質”を一致させるのがプロの設計。
ポジションによるSPRの違い
- IP(ポジションあり):
高SPRが有利。
後攻ゆえに情報量が多く、小さめCB
→後続で極レンジに圧をかけられる。 - OOP(ポジションなし):
低〜中SPRが有利。
深くなるほど意思決定の難度・逆転ラインが増えるため、
プリフロップ/フロップでサイズを上げてSPRを落とす選択が合理的。 - 実務ガイド:
- OOPでQQ/AKsなどの強ハンド→やや大きめ3betでSPR↓。
- IPでSC/低ポケ/Axs→コール中心でSPR↑し、完成時の回収幅を最大化。
SPRを意識したオールイン判断
思考フレーム(フロップ開始時)
- SPR≦2:TPTK/オーバーペアは“基本コミット”。極端な逆レンジ・最悪ボードのみ減速。
- SPR 2–3:TPTK・強ドローは入れ切り設計、ミドル強度はボード/相手次第。
- SPR 4–6:ワンペアはコントロール。スタックオフには**追加エクイティ(強ドロー/2P+)**が欲しい。
- SPR 7+:ナッツ/近似ナッツ以外は基本スタックオフ回避。将来EVを見てレイズ/コール/フォールドを組み替える。
クイック数学(必要勝率の目安)
例)Pot 40 / Behind 80でオールイン80(相手がコール80想定)
- 最終ポット=40+80+80=200
→ 必要勝率 ≒ 80/200=40% - フォールドエクイティがあれば必要勝率はさらに低下。
→ 低SPRなら“勝率40%+FE”のセミブラフでも押し切れる場面がある。
高SPRでは同じ押し込みが割に合いづらい。
まとめ
SPRを使いこなすことで無駄なコール・オールインを防げる
- 低SPRでの弱ドローの“ついコール”、高SPRでのワンペアの“ついスタックオフ”
——典型的リークはSPR基準で簡単に除去可能。 - プリフロップのサイズ設計=戦略設計。
作りたいSPRを決めてからボタンを押す。
SPRは“感覚”を“再現可能な型”に変えるツールであり、
今数字でプレイを管理すれば、勝率アップやミスの再発防止も繋がります。
また、こちらでポーカーの記事一覧をまとめておりますので、
興味のある方は以下のリンクからご確認ください。